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採用に効く「社長の声」── 求職者は入社前に何を検索しているか

採用でいちばん効くのは、給与や休日といった求人票の条件ではありません。「どんな社長が、何のためにやっている会社なのか」——求職者が本当に知りたいのはそこです。

そして重要なのは、彼らがそれを応募する前に調べているという事実です。会社名で検索し、代表者名で検索し、SNSや口コミまで見て、応募するかどうかを決めている。だからこそ、そこで出てくるべき情報は、他人が書いた求人原稿ではなく、社長本人の言葉であるべきです。この記事では、なぜ社長の声が採用に効くのか、何を語ればいいのか、そして文章が苦手でも続けるにはどうするかを整理します。

求職者は「応募する前」に会社と社長を調べている

いまの求職者は、求人媒体の情報だけで応募を決めません。気になる会社があれば、まず会社名を検索します。次に「会社名+評判」「会社名+口コミ」で調べ、代表者名でも検索し、SNSのアカウントをのぞく。応募ボタンを押す前に、その企業の輪郭を自分なりに確かめてから動きます。

これは感覚ではなくデータにも表れています。採用支援のソウルウェアが実施した調査では、就活生・社会人の約8割が「企業のSNS情報で志望度が変化した」と回答しています。求人票に書かれた条件ではなく、SNSからにじむ「働く人の雰囲気」「経営者の考え」を見て、応募するかどうかの気持ちが動いているということです。

とくに知名度の低い中小企業では、この「事前検索」が応募の分かれ目になります。大企業なら誰もが名前を知っていますが、中小企業は「検索しても情報がほとんど出てこない」ことが珍しくありません。求職者にとって情報が少ないことは、それ自体が不安材料です。ここで社長本人の言葉が出てくるかどうかが、最初のハードルを大きく左右します。

検索して出てくるべきは「社長本人の言葉」

採用広報とは、求人媒体だけに頼らず、自社の情報を自分たちで発信して、求職者に「応募先の候補」として検討してもらうための活動です。目的は認知を広げることだけではありません。入社前に会社の実像を正しく伝え、ミスマッチを減らすことが本質です。

その採用広報のなかで、社長の発信がとりわけ強いのには理由があります。求職者が検索の先で本当に知りたいのは、福利厚生の細目よりも「この会社は何を大事にしていて、どこへ向かおうとしているのか」だからです。そして、それを一次情報として語れるのは社長だけです。人事が代弁した言葉や、外部のライターが整えた美文は、読めば「作られたもの」だと分かります。多少ぎこちなくても、社長自身の言葉で語られた考えのほうが、はるかに強く残ります。

言い換えれば、社長の声は他社が絶対に真似できないコンテンツです。事業内容や待遇は似せられても、「なぜこの人がこの事業をやっているのか」という物語は、その人にしか語れません。採用広報の中心に社長の発信を置く理由はここにあります。

なぜ「条件」ではなく「社長の声」が定着を決めるのか

条件で人を集めると、条件で人は去ります。給与や休日の見栄えで応募を集めても、入社後に「思っていた会社と違う」となれば、早期離職につながります。

早期離職は精神論ではなく数字の問題でもあります。厚生労働省の調査によれば、大学新卒者の3年以内離職率は33.8%。しかもこの数字は会社の規模で大きく変わり、厚労省の同じ調査では、従業員5人未満の事業所で約57%、5〜29人規模でも約52%と、小規模な会社ほど早期離職が高い傾向がはっきり出ています。中小企業にとって、採用のミスマッチは大企業以上に痛手だということです。

ここで効くのが社長の声です。事業の方針や大事にしている価値観を、入社前にきちんと伝えておく。すると、条件ではなく「考え方に共感して」入ってくる人が増えます。共感で入った人は、多少の待遇差では揺らぎません。採用で目指すべきは応募数の最大化ではなく、**辞めない人が来る「応募の質」**であり、それを左右するのが社長の一次情報です。

社長は、求職者に何を語ればいいのか

いざ発信しようとすると、多くの社長が「何を話せばいいか分からない」と止まります。答えは、求職者が入社前に知りたがっている疑問に、正面から答えることです。目安として次の4つを押さえれば、社長メッセージの骨格はできあがります。

  1. なぜこの事業をやっているのか:創業のきっかけや、続けてきた理由。ここに人柄と本気度がいちばん出ます。
  2. どんな会社にしたいのか:これから向かう方向。壮大なビジョンでなくてよく、「こういう働き方を守りたい」でも十分です。
  3. どんな人と働きたいのか:求める人物像を、スキルの箇条書きでなく「一緒に大事にしたい価値観」で語ります。
  4. どんな判断をする会社か:何を断り、何を優先するか。判断の理由は、同業との違いがもっとも表れる場所です。

コツは、飾らないことと、弱みも正直に語ることです。良いことしか言わない発信は、かえって信用されません。課題や迷いも含めて自分の言葉で話せていれば、それがそのまま「この会社の誠実さ」として伝わります。ネタに困ったら、面接で毎回聞かれる質問を10個書き出すところから始めると、語るべきことは自然と揃います。

「文章が苦手」「時間がない」社長でも続く発信の設計

ここまで読んで「大事なのは分かるが、書く時間も文才もない」と感じた方が多いはずです。実は、社長の発信が続かないのは意志の弱さではなく、やり方の設計の問題です。詳しくは経営者の発信が続かない本当の理由でも書きましたが、鍵は「書こうとしない」ことにあります。

社長がやるべきは、机に向かって文章を書くことではありません。話すことです。頭のなかにある考えは、文章にしようとすると手が止まりますが、聞かれて答える形なら自然に出てきます。誰かに質問してもらい、それに答える。その音声を文字に清書すれば、社長の言葉のまま記事になります。話すのが苦手だという方でも、インタビューされ方のコツを押さえれば、5分から10分の対話で1本分の素材が取れます。

頻度も、毎週である必要はありません。月に1回、10分話すだけでも、1年で12本の一次情報が積み上がります。求職者が検索したときに出てくる社長の言葉が、少しずつ厚みを増していく。無理なく続く頻度まで下げることが、採用広報を「一過性のキャンペーン」で終わらせないための現実解です。

一度話した「社長の声」を、採用のあらゆる接点へ

社長の声は、一度用意すれば採用のいたるところで働きます。ここで効くのが、1回の発信を複数の媒体へ展開する一源多用(COPE)という考え方です。

たとえば月1回・10分の収録から、採用サイトの代表メッセージ、応募者に送る記事、Podcast、そしてSNSの断片投稿までを一度に用意できます。求職者は人によって情報を得る場所が違うので、読む人・聴く人・SNSで見る人のどこで出会っても、同じ社長の人柄に触れられる状態を作れます。とくにBtoBや専門サービスでは、経営者のSNSの使い分けを押さえて、一次情報の断片を各チャネルに配っておくと、検索の網が広がります。

私たち(株式会社ウェブリカ)自身、代表の連載「ウェブリカラジオ」を、月1回・話すだけの設計で続けています。第1回はわずか8分43秒の収録から、記事・音声・SNS文面までを展開しました。2026年8月には、第1号の導入企業であるオフィス南(横浜)の連載も始まります。こうした「話す→清書→多チャネル展開」の仕組みを、収録から配信まで含めて提供しているのが VoicePress です。求人票の条件ではなく社長の声で人を集めたい、という中小企業のための設計にしています。

中小企業が今日から始める4つの手順

最後に、社長の声を採用に効かせるための最小の手順をまとめます。大きな予算も専任の広報担当もいりません。

  1. 面接でよく聞かれる質問を10個書き出す:求職者の疑問がそのまま発信のテーマになります。
  2. 月1回、その質問に「話して」答える:書かず、誰かに聞いてもらって答える形にする。文章化はあとで清書すればよい。
  3. 採用サイトに一次情報として置く:整えすぎず、社長の言葉のまま載せる。求職者が検索でたどり着ける場所に置くことが肝心です。
  4. SNSと音声に断片を配る:同じ素材を各接点にばらまき、どこで出会っても同じ人柄が伝わるようにする。

外部のライターに任せた記事が「自分の言葉」にならないのには構造的な理由があります。採用広報の中心には、代弁ではなく社長本人の一次情報を据えてください。それが、辞めない人を集める最短の道です。

まとめ

  • 求職者は応募する「前」に会社名・代表者名・SNSまで検索して志望度を決めている(約8割がSNS情報で志望度が変化)
  • そこで出てくるべきは求人原稿ではなく、他社に真似できない「社長本人の言葉」=一次情報
  • 条件で集めると条件で去る。とくに小規模な会社ほど早期離職が高く、ミスマッチの痛手は大きい
  • 語るべきは「なぜこの事業か・どんな会社にしたいか・どんな人と・どんな判断をするか」。弱みも正直に
  • 続かないのは意志でなく設計の問題。書かずに「話す」=月1回・10分で一次情報は積み上がる
  • 一度の収録を採用サイト・記事・Podcast・SNSへ多用(COPE)すれば、検索で出会える面が増える

採用に効くのは、いちばん条件が良い会社ではなく、社長が何を考えているかが見える会社です。まずは面接でよく聞かれる質問を1つ、社長の言葉で語るところから始めてみてください。

よくある質問

Q. 社長メッセージは動画とテキスト、どちらで出すべきですか?

どちらか一方に絞る必要はありません。まず中身(何を語るか)を固めることが先で、形式は後です。おすすめは、一度話した内容を文字にも音声にも展開する方法です。求職者によって「読む人」「聴く人」「観る人」が分かれるため、同じ一次情報を複数の形で置いておくと、どの接点で出会っても同じ人柄が伝わります。撮影のハードルが高い動画から始める必要はなく、話した音声とその清書テキストからで十分です。

Q. カリスマ性のない、話すのが得意でない社長でも効果はありますか?

あります。求職者が見ているのはプレゼンの巧さではなく、判断の理由と一貫性です。「なぜこの仕事を大事にしているか」「どんなときに迷い、どう決めたか」を、飾らずに自分の言葉で話せていれば、それ自体が他社に真似できない価値になります。むしろ立て板に水の完璧なスピーチより、言葉に詰まりながら本音を話す社長のほうが、誠実さが伝わることが少なくありません。

Q. 採用広報として社長の発信を始めて、効果が出るまでどのくらいかかりますか?

検索から読まれる蓄積型のコンテンツは立ち上がりが静かで、評価されるまで数か月かかるのが普通です。応募数のような数字より先に、「面接で『記事を読みました』と言われる」「志望動機が具体的になる」といった質の変化が現れます。短期の応募数だけで判断せず、最低でも半年から1年、応募者の質と入社後の定着で見てください。

Q. 求職者は本当に、求人票だけでなく社長の発信まで見るのですか?

見ています。応募前に会社名や代表者名で検索し、SNSや口コミまで確認してから応募するかを決める人が多数です。とくに知名度の低い中小企業ほど「情報が少ない=不安」になりやすく、そこで社長本人の言葉が出てくるかどうかが、応募のハードルを大きく左右します。

Q. 会社にネガティブな口コミがある場合、社長の発信で対抗できますか?

口コミを消すことはできませんが、判断材料を増やすことはできます。求職者は一つの評価だけで決めるのではなく、複数の情報を突き合わせて総合的に判断します。社長が自分の言葉で事業の方針や大事にしていることを継続的に語っていれば、匿名の断片的な評価より、責任の所在がはっきりした一次情報のほうが信頼されやすくなります。反論するのではなく、事実と考えを淡々と積み上げることが最も効きます。

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